コラム1:【憲法と法律は同じもの?違うもの? 前編】
【憲法と法律は同じもの?違うもの? 前編】
憲法と法律は同じものでしょうか?それとも、違うものでしょうか?
答え
両者は、違うものです。
何が違うかというと、向いている方向が違う。
私が憲法の講義でこの話をするときは必ず、以下に添付したような図を書いて説明するようにしています。
人類が数々の悲劇から獲得した立憲主義というシステムは、大胆に簡略化すれば以下の図のようなシステムのことを言います。
この図では、たとえば、法律にも民衆の意思が間接的に反映されることや、憲法と民衆が真にイコールといえるのか否かという問題意識などは表現されていませんが、ここであえて、簡略化した図で説明しようと試みているのは、憲法と法律がそれぞれ、向いている方向が違うという点です。
憲法の矢印は国に向かっていて、法律の矢印は民衆に向かっています。
つまり、法律というルールは『国』から『民衆』に、(民衆は憲法とイコールですので)憲法というルールは『民衆』から『国』に向いている、というわけです。
これは、日本国憲法を含む、立憲主義を採用する憲法一般にあてはまる話ですが、たとえば日本国憲法には、次のような条文があります。
第99条(憲法尊重擁護の義務)
天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負う。
ここに、「国民」の文言はありません。
つまり、日本国憲法は、民衆である私たちが従うべきルールではなく、
国会議員ほか、国家権力あるいは統治機構とイコールの立場にいる人間が、その立場に基づいて行動するときに従うべきルールなわけです。
(なお、日本国憲法には、納税の義務や教育の義務など、国民の義務を定めた規定がありますが、私たちがそれらの義務に反しても、「憲法違反」を問われることはありません。あくまで、憲法を具体化した下位法規の違反の有無が問題になるだけです。)
実際に、日本国憲法がこれまでどのように機能してきたかについては、今後にまわして、ひとまず次回は、以上の話を憲法改正の議論にあてはめてみたいと思います。
0コメント